帰郷



 一台の高速バスが高速道路を走っていた。某年元日の早朝四時半。真冬とは言え空はそろそろ白んで来ている。一日と一年の始まりを感じさせるその空は澄み渡っていた。とは言え、休憩時以外夜通し走り続けてきたバスは運転席以外のカーテンが閉め切られている。初日の出も見えやしない。

 バスは間もなく料金所に差し掛かり、無人のそこをすり抜けて行く。カチャっ、という音がした。高速を降り、一般道に入ったバスは、途端に速度を緩める。人の姿も車の姿もまるで見当たらない。早朝とはいえ正月なのに、初詣に出かける家族や友人、恋人同士の姿もない。それがこの町ではもう何年も当たり前の風景だった。やがてバスは慎重に路肩によって、停車した。二つの扉から、続々と降りてくる武装した兵士たち。彼らは辺りを警戒しながら、停まったバスの影で三列に並ぶ。そして固く誓い合い、銃を掲げる。今日こそはこの町を、いや、この国を、この地球を、侵略者たちから奪還し、里帰りを果たすんだと。


【了】



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