恋文



 大掃除さながらに自室を片付けていたらテレビ台の下から出て来た便箋。ハッとした。それは俺がまだ小学六年生だった時、つまり十年前、当時隣に住んでいた年下の女の子から貰ったものだった。手で拾い上げる。開いてみると、あの頃のことが鮮明に思い出された。懐かしい。お腹が空いただけで泣き喚くような子だったけど、純粋で、素直で、そんな所がとても好きだった。知り合って二年と経たない内にラブレターを渡された時は流石に驚いたけど、嬉しかった。嬉しさのあまりこのまま攫ってしまいたいほどだった。親父さんがもの凄く怖かったけど、いつか攫いに来ると、信じがたいほど臭い台詞を吐いたことを思い出した。

 うわ、恥ずかしいな。多分、アニメのセリフでも真似したんだとは思うけど。まあ、二十歳になった時、実際にその親父さんから攫ってやったんだから、今思えば笑い話になるんだろう。

 ――そうだ、今の彼女に見せてあげよう。

 思い立った俺は押入れを開けた。相変わらず可愛い少女がそこにはいた。いきなり蛍光灯の明かりに晒されたからか、薄目でこっちを見つめ返してくる彼女に向かって、便箋を開いて見せてあげた。

「ほら、懐かしいだろ? これ。ははっ、でも何て書いてあるんだろうなこれ」

 多分、彼女にも分からないだろう。だってこれは彼女が幼稚園に入る前に書いて渡してくれたものだから。


【了】



戻る   サイトトップ